📰今日のニュース
☝️一面のワケ
世界的な投資家が着目する日本独自の企業群が、資源危機で果たした役割の大きさが浮かび上がってきたため。
❓今日の問
エネルギー安保、守っているのは誰か
📚目次
日本にしかない業態、その正体
ホルムズ海峡封鎖が招いた危機
政府の「確保できている」の実態
📝要点
「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、2020年以降、日本の五大総合商社株を買い増し続け、保有比率はいずれも9〜10%近くに達しています。
「今後50年は売らない」とまで公言するほどの入れ込みようです。
なぜ今、日本独自のこの業態がここまで注目されるのでしょうか。
ひとつには、今年前半に表面化した中東発のナフサ(粗製ガソリン)供給危機で、実際に物資を確保して回ったのが政府ではなく商社だった、という事実があります。
しかもその危機は小さな話ではありませんでした。
製造業のおよそ3割にあたる約4.7万社が、ナフサ関連製品の調達リスクに直面していたというデータもあります。
それほどの危機にもかかわらず、政府は「量は確保できている」と説明していました。
現場では綱渡りの対応が続いていたというのに、危機対応の実態がどこまで機能していたのかは、いまだにはっきりしません。
総合商社とは何なのか、今回の危機で何が起きていたのか、そしてそのギャップを実際に埋めていたのは誰だったのかを見ていきます。
🚢日本にしかない業態、その正体
商社は、単に商品を右から左に流すだけの会社ではありません。
資源の権益を自ら持ち、物流から金融、事業投資までを一手に引き受ける、世界でも類を見ない業態です。
ルーツは1865年、坂本龍馬らが長崎で結成した亀山社中に遡ります。
そこから時代を経て、1876年に設立された三井物産などが近代的な商社としての形を整え、財閥の中核として国の産業振興を担うようになりました。
戦後の財閥解体でいったん解体されたのちも、資源を輸入し製品に加工して輸出する加工貿易国家・日本を裏方として支えてきました。
1973年の石油危機では逆に「買い占め」と国会で批判された過去もありますが、その後バブル崩壊を経て単純な仲介業から事業投資会社へと姿を変え、今の総合商社になりました。
欧米では、資源の権益を持ったり事業に投資したりする機能を、メーカーや銀行がそれぞれ自前で担っています。
一方日本では、その機能をメーカー・銀行・商社の三者で分担する構造になっています。
この分担の違いが、総合商社という業態が他国に根付かなかった理由とされています。
🌊ホルムズ海峡封鎖が招いた危機
日本が輸入する原油の多くは中東に依存しており、エネルギー自給率はわずか15%ほどしかありません。
今年、ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態が起き、中東産のナフサ(粗製ガソリンでシンナーなどの原料になる)の供給が滞りました。
「ドラム1缶でもいいから、すぐ欲しい」。
顧客企業からそんな声が相次いだことをきっかけに、三菱商事は傘下の三菱商事ケミカルが持つ国内10カ所の備蓄タンクを放出し、韓国やカナダからの代替調達にも動きました。
ナフサの国内輸入の4割を担う丸紅も、真っ先に頼れるはずだった米国がすでに欧米の資源メジャーに押さえられていたことを受け、現地駐在員の情報を頼りにペルーやインドといった新規の取引先を開拓しました。
📣政府の「確保できている」の実態
経済産業省は国家備蓄石油の放出や民間の備蓄義務日数の引き下げを行い、供給量の確保に動きました。
政府としては「日本全体としては量を確保できている」という立場です。
ところが、帝国データバンクの調査では、製造業のおよそ3割にあたる約4.7万社がナフサ関連製品の調達リスクに直面していたことが分かっています。
建設現場では塗装用のシンナーや錆止め塗料が出荷停止になったり、価格が大きく上昇したりする事態も相次ぎました。
国全体で見れば量は足りていても、それが個々の企業や現場まで行き渡るかどうかは別の話だったわけです。
実際にその隙間を埋めていたのは、三菱商事や丸紅が個別に動かした備蓄の放出や代替調達でした。
🤔私はこう考える
今回のケースを見ると、政府の「量は確保できている」という説明は、実際にはかなり際どいところで成り立っていたと言えそうです。
全体の数字がそろっていても、それが個々の現場にまで届くかどうかを最終的に埋めていたのは、商社の個別対応でした。
この構図は、今回限りの話では終わらないように思います。
中国との関係が緊張する場面が増え、レアアースなど特定の資源を巡るサプライチェーンの組み替えが今後も必要になっていくと見られる中で、政府にとって商社が持つ調達網や現地とのつながりの重要性は、下がるどころかむしろ増していくのではないかと感じています。
👀この記事で身につけておきたい3つの視点
総合商社は資源権益の保有から事業投資まで担う、他国に類を見ない日本独自の業態として発展してきている
エネルギー自給率15%の日本を襲ったナフサ危機で、実際に物資の確保を担ったのは政府ではなく商社の個別対応だった
政府の「量は確保できている」という説明の裏で、製造業の3割にあたる約4.7万社が個別に調達リスクに直面していた
💡結論・メッセージ
今回のナフサ危機が示したのは、資源を持たない国が有事に直面したとき、実際に物資を動かせるかどうかは、政府の集計上の数字だけでは測れないという現実です。
国全体で量が足りていても、それを個々の企業・現場に届ける最後の部分を担う主体がいなければ、危機対応は絵に描いた餅になりかねません。
分断が進み、資源や供給網を巡る各国の綱引きが強まる中で、この「最後の部分」を誰がどう担うのかは、日本にとって一度きりの問いではなく、これからも繰り返し向き合うことになる設計課題だと言えそうです。
政府と民間、双方がその役割分担をどう位置づけていくのかが問われています。
📰今日のその他の一面
医師の多くが窓口負担拡大に賛成し、医療制度の持続可能性に強い危機感を持っていることが分かりました。医療現場からも財政面の懸念が根強いことがうかがえます。一方で負担引き上げを進める際には設計の丁寧さが欠かせません。高齢者は現役世代と異なり所得というフロー情報だけでは生活実態が見えにくく、「現役並み」所得とされていても資産に乏しく生活が苦しい人も存在します。所得だけでなく資産も含めた応能負担の仕組みを整えなければ、見かけ上は公平でも実際には生活困難な高齢者に過度な負担を強いる恐れがある点に注意が必要です。
戦闘機やレーダーなどの装備品にサイバー防護技術を組み込む取り組みは、脅威の高度化に対応するうえで必要な措置です。一方でこうした装備更新には継続的な財源が必要ですが、防衛費の財源は歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を積み立てる基金、そして一部増税で賄う枠組みが既に組まれており、増税分の議論は先送りされがちで国民的な合意形成が十分に進んでいるとは言えません。個別装備のアップデートは注目されやすい一方、その裏付けとなる財源の安定性や国民負担の在り方についての議論が相対的に乏しいまま進んでいる点が気がかりです。
✉️追伸
商社シリーズ、あと2回くらいありそうです。


