📰今日のニュース
☝️一面のワケ
日銀が利上げを続ける中、その恩恵が企業年金の運用成績として現れ始めたため。
❓今日の問
企業年金の利回りは物価上昇に追いついているのか
📚目次
老後給付を支える企業年金の二つの仕組み
利上げが10年ぶりに緩めた年金財政の重圧
名目が回復するのに実質が目減りし続ける現実
📝要点
日銀の利上げで生保各社が受託する企業年金の運用利回りが、2025年度に平均1.71%と10年ぶりの高水準になりました。
しかしながら、その利回りは物価上昇率約3%にまだ届いておらず、実質ベースでは退職給付の価値は2003年比で約4分の3まで下がり続けています。
さらに、この利回り改善の恩恵は企業年金を持てる会社員に限られており、国民年金のみに頼る自営業者や、就職氷河期世代のように企業年金を十分に積み立てられなかった人々には届きません。
「改善した」という数字の裏で、誰が恩恵を受け、誰が物価上昇のしわ寄せを受け続けているか。
その非対称な構造が問われています。
💰老後給付を支える企業年金の二つの仕組み
企業年金とは、国民年金・厚生年金に上乗せして会社が社員のために設ける独自の年金制度です。
この制度には大きく二つの種類があります。
一つは確定給付企業年金(DB)で、「将来いくらもらえるか」があらかじめ決まっている形です。
毎月の掛け金を積み立て、運用が足りなければ会社が穴埋めをするため、リスクは会社側が持ちます。
もう一つは確定拠出年金(DC)で、会社が出すのは毎月の掛け金の額だけ。
その先の運用成果は社員自身に委ねられ、増えるも失うも自分次第です。
この二つ、それぞれ約900万人が加入しており、今回のニュースの主役はDBのほうです。
生保はDBの受託で6割超を占め、掛け金を主に国債で運用しています。
生保が定める「予定利率」という目標利回りを上回ると年金財政に余裕が生まれ、給付の増額につながっていきます。
では「金利ある世界」の到来は、このDB制度に何をもたらしたのでしょうか。
🏦利上げが10年ぶりに緩めた年金財政の重圧
日銀が2024年3月にマイナス金利を解除し、その後も段階的に利上げを進めたことで、生保のDB向け運用利回りは2025年度に平均1.71%と10年ぶりの高水準に達しました。
国債の金利が上がったことで利息収入が増えたためです。
この数字を理解するには、かつての状況を振り返る必要があります。
バブル崩壊後の1990年代以降、長引く低金利の中で生保は「逆ざや」のリスクに悩まされ続けました。
逆ざやとは、運用で稼いだお金が予定利率(目標利回り)を下回ってしまう状態のことで、年金の受託を一時停止した生保が出るほど深刻な時代でした。
「金利ある世界」への移行はその重圧を和らげ、年金財政に余裕を生む方向に動いています。
富国生命の利回りは2.4%と、DB制度が始まった2002年度以降で最高の水準です。
日本生命は5年ぶり、第一生命は11年ぶりの高水準に達しています。
では、この改善は実際に年金受給者の生活を豊かにするものなのでしょうか。
📈名目が回復するのに実質が目減りし続ける現実
2025年度の平均利回り1.71%は確かに10年ぶりの高水準です。
しかし、比べたいのが物価上昇率で、現在は約3%で推移しています。
利回りが物価の上昇を下回っているということは、年金で積み立てたお金の「買える量」が毎年少しずつ減っていることを意味します。
三井住友信託銀行の調査では、退職給付の実質的な価値は2003年を100とすると、2023年には76まで下がっています。
受け取る年金の金額は変わらなくても、同じお金で買えるものが4分の3まで減った計算です。
「利回りが上がった」という数字上の明るさに対して、物価上昇という重力が給付の価値を静かに削り続けています。
「逆ざや」の時代には運用問題が制度の危機として目に見える形で問われました。
今度は物価上昇というリスクが、より見えにくい形で受給者の手取りを侵食しています。
そして実はこの話、企業年金を持てる人々の間だけでの議論にすぎません。
🤔私はこう考える
企業年金の利回り改善の話は、会社員の中でも比較的恵まれた環境にある人々の話です。
利回りが物価上昇率を下回っていても、企業年金を受け取れる会社員はなお相対的な余裕を持つ層と言えます。
問題はその外側にいる人々です。
国民年金のみに頼る自営業者や、正社員期間が短く十分な企業年金を積み立てられなかった人々は、そもそも年金を十分に受け取れず、老後貧困に陥るリスクを抱えています。
就職氷河期世代がその典型で、物価上昇のダメージはこうした層により重くのしかかる構造になっています。
「企業年金の増額余地が広がる」というニュースは、一定の層の中での小さな改善を報じているに過ぎないとも言えます。
「誰もが最低限の老後保障を得られるか」という問いは、企業年金という限られた制度の改善とは別の話として、問い続ける必要があるのだろうと思います。
👀この記事で身につけておきたい3つの視点
利回りが上がっても物価上昇率(約3%)に届かない限り、年金給付の実質的な購買力は目減りし続けている
企業年金(DB)の運用リスクは会社が持つため、利回り改善の恩恵は先に会社の財政に現れ、受給者への波及には時間差がある
企業年金の恩恵は正社員を中心とした会社員に限られ、自営業者や雇用が不安定だった世代には届かない構造になっている
💡結論・メッセージ
「金利ある世界」への移行は、企業年金の名目利回りを正常化しつつあります。
しかし、物価上昇という現実の前では依然として十分ではなく、実質的な給付価値の回復にはまだ遠い状況です。
さらに視野を広げると、この「改善」の恩恵に与れるのは企業年金を持つ会社員に限られており、その外側にいる人々の老後保障はより深刻な状況にあります。
「誰の老後を、どう支えるか」という問いは、企業年金という特定の制度の利回りが改善したという話で答えられるものではありません。
日本社会全体として、年金制度の設計そのものを問い直す局面が来ているのだろうと思います。
📰今日のその他の一面
市場は「政府・日銀はそう簡単には介入できない」と見透かしている可能性があります。日米の金利差は大きく、政権への配慮もあって日銀の利上げは後手に回りがちで、円高に向かう材料は乏しい状況です。介入は一時的な「止血剤」にとどまり、構造的な金利・成長格差が解消されない限り、円売り圧力が続き、ズルズルと円安が進行する可能性は高いと考えられます。
円・ルピーの直接取引検討は、成長が続くインドとの貿易・投資を後押しし、日本企業の為替コストやドル依存リスクを減らす狙いがあります。 ただ、日本企業は複雑な文化・言語・宗教への理解不足からインド事業で苦戦し、撤退を繰り返してきています。直接取引は金融面の追い風にすぎず、多様な文化・商習慣を尊重し、現地社会にどこまで馴染めるかが、インド定着の成否を分けそうです。
「女性皇族の身分保持」案と同時に決定されましたが、女性皇族本人や配偶者・子に皇族の地位を広げる規定は盛り込まれず、皇位継承資格はあくまで男系男子の子孫に限定されています。結果として、皇族数確保という建前の一方で、将来的に皇位を継ぐのは旧宮家系の男系男子という構図が制度上組み込まれています。どうしても「男性天皇しか認めたくない」という思いがありそうだと見えてしまうんですよね。
✉️追伸
「年金制度が崩壊する」といった言説が出たりしますが「それはない」と確信を持って言ってよいと思っています。
崩壊しないために数年ごとに見直し制度設計を考え続けてるわけなので。


