米利上げ、手探りの到達点
FRBが11会合ぶり停止、物価見通し誤算続き 「あと2回」疑う市場
《今日の主題》
利上げは一時停止したものの、市場に漂う楽観的な雰囲気をいかに抑え込めるかが課題
《ポイント》
1.インフレを抑えるためにかなり早いペースで利上げを行ってきていた
2.利上げの影響で銀行破綻などマイナスの影響が目立ち始める
3.市場の楽観視による景気加熱→インフレ加速を警戒
今日の記事はFRB(アメリカの中央銀行)が利上げ停止したよという話。
*利上げの停止がなぜ話題に?
アメリカは昨年から急激な物価高(=インフレーション/略してインフレ)に見舞われてきました。
インフレの対処法は「金利を上げる」がセオリー。
金利を上げることで…
お金が出回らなくなる→お金の供給が少なくなる→需要と供給の関係でお金の価値が上がる→相対的に物価が下がる
という理屈です。
インフレ率は+2%程度が目標になる中、5月+4%でまだ高い状態が続いています。
インフレを抑えたいのであれば今回も利上げを行うはずですが今回はそうしなかったということがニュースになっています。
*なぜ利上げをしなかったのか
一番大きい理由は急激な利上げによりアメリカで中堅の銀行が破綻したことにあります。
利上げはインフレを抑える一方、お金が出回らなくなるため景気が悪くなるという側面もあります。
景気が悪くなれば銀行が融資している企業の経営が悪化して返済されないのではないか。
そうなれば預けているお金が返ってこないのではないかという不安が連鎖して預金を引き出そうとしました。
いわゆる取り付け騒ぎと呼ばれるものです。
ITベンチャーに特化して融資を行っていたシリコンバレー銀行などが破綻したのは記憶に新しいところです。
インフレは抑えたいけれど、これ以上の金融不安は困るという悩ましい状態で、今回はひとまず利上げを見送ろうという判断になりました。
*求められる市場とのコミュニケーション
一旦利上げが見送りになったとは言え、パウエル議長(FRBのトップ)は「まだ今年は追加利上げの可能性はある」という旨の発言をしています。
これは「この先金利は下がっていくのではないか。景気は良くなっていくのではないか。」と考える人が多くなると景気が過熱しせっかく抑え込もうとしていたインフレがまた加速してしまうからです。
市場関係者に向けた「まだ状況はわからないから過度に楽観的にならないでね」というメッセージ。
米国の景気を上手くコントロールしていくためにこの先も市場との細かいコミュニケーションが求められていくことになると思います。