昨日日銀の金利政策についての記事を流しました。記事は以下(有料記事なので無料登録の方見れません。すみません)。
書いた後(昨日29日ですが)同日に日銀が発表した「経済・物価情勢の展望」と日銀総裁会見を通して見たので日銀としての狙いをお伝えした上で、昨日の記事の段階であった私の認識不足についてお話できればなと思っています。
✋そもそもの前提
今年4月に日銀総裁に就任した植田和男さんは経済学者で、戦後初の学者出身の総裁ということで人事案が出てきたときから注目されていました。これまでは財務省(大蔵省)の官僚か日本銀行の職員が総裁になってきました。
日本銀行総裁の仕事って結構特殊な仕事らしく組織内のことをしっかりわかっていないとできないらしいんですよね。2代前の総裁だった白川方明さんの本にその様なことが書いてありました。この本おもしろかったので「中央銀行って何してるところなんだ?」とか「バブル景気ってなんだったんだ?」って思ってらっしゃる方はオススメです。「高度成長から安定成長への移行、少子高齢化、米国との摩擦……。日本が向きあった課題に、中国は今まさに直面している。」ということで中国でも2021年に出版されており注目を集めています。
だいぶ話が脇道にそれましたがそんなことから総裁人事にとても興味を持ちました。日銀総裁は国会同意人事となるため、衆議院と参議院の両院から同意を得る必要があります。「所信聴取」という総裁候補がどんなことを考えてどういう方向で進めていくのかという話を聞く時間を持ったあと、議員による質疑を経て可とするか不可とするかが決められます。
総裁候補者の所信聴取は「議院運営委員会」という基本的に公開されない委員会で行われますがネット中継を行うべきではないかという提案があり中継されることとなりました。尽力された議員の皆さんに感謝。そんな経緯もあり衆議院と参議院で行われた聴取を通して聞きました。
「色んな方面に気配りができて、ご自身の考えや理論がしっかりあり、自分の言葉で話せる人だな」というのが印象です。何目線やって感じですが。ということでかなり好印象だったわけです。総裁の発言ひとつで株価や為替に大きく影響することもあるため「言えることと言えないことがある」というのは理解した上で私個人は植田さんの言葉をかなり信用しています。すごく長くなってしまいましたが要は「私は植田さんの言葉を肯定的に捉えるためそちら方面へのバイアスがかかりやすいよ」ということです。
📺会見を聞いて
今回の金融政策決定会合後の会見で植田総裁は基本的に「現状維持」で、若干「柔軟化」させたということみたいです。
記者から「今回の措置は金融引締めなのかどうなのか」と繰り返し聞かれていましたが「何かあった時に対応できるようにするためであって変更というわけではない」と説明していました。私も聞いている最中は「引き締めの方向じゃないの?」と思っていましたしニュースを読んだ段階では引き締めへと動き出したんだなと理解しそのように書きましたが総裁の説明を聞いていると若干ニュアンスが違うのかなと感じました。
曰く、「明確に何かが起こってから行動すると影響が大きくなってしまうためいつでも対応できるように幅をもたせた」ということだそうです。個人的な認識としては例えば…『急な物価上昇が起こった場合決定会合の判断に注目が集まり市場が過剰に反応してしまう』といったような事態を避けたいということなのかなと見ています。これまでは0.5%までしか幅がなかったけれどもそれを念のために1%までに広げておくことで緩衝帯が広がった。それが「柔軟化」ということなのかなと。
とはいえ、1%までの上昇を許容したことになるわけで金融引締め的な動きと言って差し支えはないと思います。今日の記事ですがオーストラリア、フィリピン、マレーシアの10年物国際の利回りが一時上昇したとありました。海外に流れていた日本の投資マネーが還流するのではないかとの考えからだそうです。
今後その他色々なところに影響が出てくるんだろうと思います。それらの動向を見た上で9月の決定会合での判断がなされていくことになるわけで、どの様な影響が出るのか、そしてどの様な判断がなされるかに注目が集まることに変わりはありません。