📰今日のニュース
☝️一面のワケ
4年連続マイナスだった実質賃金が13ヶ月ぶりにプラスへ転じた直後の「最初の答え合わせ」にあたるため。
❓今日の問
賃上げは日本全体に本当に届いているのか
📚目次
名目賃金と実質賃金
6割が満額回答
官製春闘の変容と中小に残る壁
📝要点
春季労使交渉の集中回答日、主要製造業の6割超が満額回答しました。
トヨタは6年連続、連結最終赤字見込みのホンダも応じました。
数字だけ見れば「賃上げの定着」に見えます。
しかし物価の影響を差し引いた実質賃金が13ヶ月ぶりにプラスに転じたのは今年1月のことで、原油高騰が進めば4月以降に再びマイナスに転じるリスクがあります。
大手が満額回答を続ける一方、中小企業はエネルギー費用の高騰を価格転嫁できておらず賃上げ余力が乏しい状態。
賃上げの報道が躍るこの春、「賃上げが全体に届いているのか」という問いへの答えはまだ出ていません。
💴名目賃金と実質賃金
毎年春になると「賃上げ」の報道が増えますが、まず押さえておきたい言葉があります。
「名目賃金」とは手取り前の額面上の賃金のこと。
「実質賃金」はそこから物価の上昇分を差し引いた賃金。
名目が上がっても物価がそれ以上に上がれば、実質賃金はマイナスになります。
「給料は増えたのに生活が楽にならない」という感覚の正体はここにあります。
日本では実質賃金が2025年まで4年連続マイナスが続きました。
2026年1月に13ヶ月ぶりにプラスへ転じたのは、ボーナスの影響と物価上昇が一時的に鈍化したことが重なった結果です。
2月・3月もプラス維持が見込まれていますが、原油高騰が進めば4月以降に再びマイナスに転じるリスクがあります。
「プラスになった」という事実と「定着した」という確信はまだイコールではありません。
この前提を踏まえると、今年の春闘の数字をどう読むべきかという問いが生まれます。
🌸6割が満額回答
今年の春闘では主要製造業の6割超が満額回答しました。
トヨタは6年連続、赤字見込みのホンダも総額1万8500円の満額回答に踏み切りました。
「業績が良いから賃上げする」ではなく「業績が厳しくても人材を手放せないから上げる」という防衛的な論理です。
人手不足が深刻化する中、人材の引き止めが経営上の優先課題になっている現れといえます。
ただしこの論理が通用しやすいのは主に大手企業です。
中小企業庁の調査では、エネルギー費を価格転嫁できている中小企業の割合は約48.9%にとどまります。
賃上げの原資を生み出す余力があるかどうかは、大手と中小で大きく異なります。
大手の満額回答が「全体の賃上げの定着」を意味するとは限りません。
では、この構図はなぜ生まれたのか。
🏛️官製春闘の変容と中小に残る壁
数年前の春闘は「政府が旗を振り、経営側に賃上げを促す」官製の色合いが強いとも言われていました。
近年は政府の呼びかけに依存するだけでなく、人材確保という経営上の必要性から企業が自主的に賃上げを判断するケースが増えています。
2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)は、大企業が中小に一方的なコスト負担を押しつける慣行を是正するための法律で、今回の春闘はその施行直後の最初の答え合わせでもあります。
しかし足元では、イラン情勢を受けた原油高騰が中小のコスト環境を圧迫しています。
価格転嫁が難しい状況でエネルギーコストが上がれば、賃上げの原資はさらに細ります。
中小企業が持続的に賃上げできるかどうかは、取引慣行の是正と価格転嫁力の両方にかかっています。
大手の春闘結果は重要ですが、労働者の多くを占める中小で賃上げが行われることが、実質賃金をプラスにするための重要な要素となりそうです。
🤔私はこう考える
個人的には春闘の結果は日本の今後一年の景況感をうっすらと映す年次バロメーターだと思っています。
昨年は「人材を手放せないからやむなく上げる」という防衛的賃上げへの言及が目立ちました。
今年はそのトーンがやや薄まってきた印象があります。
その背景の一つに、生成AIの普及により一部の企業では新卒採用を絞り始めているという動きがあります。
「誰でも採用したい」から「厳選採用へ」という変化が起きているとすれば、賃上げの全体傾向は読みにくくなり、企業ごとのグラデーションが広がっていくかもしれません。
鍵を握るのは引き続き、中小企業が物価上昇分を価格に転嫁できるかどうかです。
原油高騰によるエネルギーコストの増大が新たな不安定要因として加わっている今、実質賃金プラスの定着なくして日本経済の本格回復はありません。
👀この記事で身につけておきたい3つの視点
名目賃金が上がっても物価上昇がそれを上回る限り実質賃金はマイナスのままであり、「賃上げ報道」は常に物価の動きとセットで読む必要がある
大手製造業の満額回答は人材確保を目的とした防衛的賃上げの側面を持っており、業績の好調と必ずしも連動していない
中小企業の価格転嫁力が日本全体の賃上げ持続性を左右しており、取引慣行の是正と原油価格の動向が今後の焦点
💡結論・メッセージ
今年の春闘で大手製造業の6割超が満額回答したことは、賃上げの機運が続いていることを示しています。
しかし実質賃金のプラスが定着しているかどうかはまだわかりません。
名目の数字が上がっても、物価がそれ以上に上がれば意味が薄れます。
今問われているのは「賃上げの持続性」です。
その鍵を握るのは大手企業ではなく、日本の雇用の多くを支える中小企業が価格転嫁力を持てるかどうかにあります。
原油高騰という新たな外圧が加わる中で、取引慣行の是正と賃上げ原資の確保が同時に求められる局面に入っています。
実質賃金プラスの定着が一時的な好転で終わるのか、本格的な回復につながるのかが問われます。
📰今日のその他の一面
レアアース大国への条件(3)リサイクル、欧州が先行 日本、技術より流通に「崖」
レアアースの採掘・精製には大量の有害廃棄物や放射性廃棄物が伴い、環境負荷は甚大です。既に製品内に蓄積された資源を再利用するリサイクルへの転換はいずれ避けられない道筋。欧州はEU規則で磁石リサイクル比率25%目標を掲げ制度整備が先行しています。かたや日本は潜在埋蔵量が世界有数でありながら、廃製品の回収・選別・流通ネットワークの未整備であることが課題となっています。
現代の紛争では陸海空に加え宇宙・サイバーが新たな戦場となり、衛星へのジャミングやサイバー攻撃が日常的な脅威となっています。日本は2026年2月にフランス主催の13カ国参加による宇宙演習「SparteX 2026」に参加し、連携を実地検証しました。中露を念頭に、単独では対応困難な領域での抑止力強化には、信頼できる西側同志国との協力体制の構築が不可欠です。
日米交渉の一環として次世代原発(SMR)や天然ガス発電施設を含む10兆円規模の対米投資第2弾が調整されています。しかし前提となったトランプ関税は、米連邦最高裁が「大統領権限の逸脱」として違憲と判断し停止。代替の15%関税も法的安定性が低い状況です。関税という交渉カードが違憲とされた以上、そのバーターとして合意した巨額投資を粛々と進める政治的・法的根拠の再確認が不可欠と言えます。
✉️追伸
イラン情勢がほんと不確定要素ですよね。
ここがどうなるか見通せない限り経済の見通しも立たないなと言う印象です。


